島根県の地域ブランド「石州瓦」

石州瓦工業組合(島根県江津市嘉久志町イ405)は、平成19年(2007)3月9日、石州瓦を地域団体商標として商標登録しました。

島根県石見地方で生産されている石州瓦は、国内三大瓦ブランドの一角を占める名産品で、生産量は全国2位を誇ります。

その発展の歴史をたどっていくと、高いブランド力の背景がわかってきました。

目次

島根県の石州瓦とは

島根県西部地方で生産される石州瓦の特徴は、1200~1300℃という高温で焼成されることによって生まれる高い硬度、塩や低温への強さ、その結果としての優れた持久性を発揮します。

こうした高い品質が、島根県だけでなく広く日本海沿線の潮風や積雪にさらされる地域で重宝され、全国的な名声を確立していきました。

一般に、粘土は、高温で焼くほど硬度が増すと言われています。

とはいえ、ただ焼成温度を高くすればいいわけではありません。

粘土の性質によっては温度が高すぎると変形の原因にもなるし、とくに釉薬を使う場合は釉が分離する「ぶく」という現象を起こし、瓦として使い物にならなくなります。

この点、石見銀山で知られる島根県西部一帯に広がる「都野津層」から獲れる粘土、および、島根県東部の出雲地方で産出される来待釉薬は熱に強い性質を持っており、石州瓦の高い品質を実現させました。

島根県の石州瓦の発祥

島根県で瓦の生産が盛んになったのは、今から約400年前、江戸時代が始まったころのことです。

戦国の世が終わり、江戸幕府の統制の下に各藩が自治を行う幕藩体制が成立すると、全国各地で城郭を中心とした街づくり、いわゆる城下町づくりが一斉に始まりました。

島根県の西部に位置していた石見藩でも、浜田城を中心とした城下町が建設され、瓦の需要が急増。

この中で瓦産業も成長したのです。

石州瓦が全国有数の産地になっていったのは、良質の粘土、釉薬が産出されるという地の利もありましたが、それに加えてもう一つ、「石見焼」の存在がありました。

石見焼は、地元石見で生産されていた焼き物で、特に大型の瓶製品の評価は高く、「はんど」と呼ばれて全国に普及していました。

石見焼製の瓶は、硬く丈夫で寒さに強く、長持ちする水瓶として知られていたのです。

先述した、石州瓦の特徴に似ていることに気づいたでしょうか。

島根県の石州瓦の品質は、同じ土、釉薬で作られる石見焼の技術、高温の焼き物が可能な巨大な登り窯などのベースがあったからこそ可能だったのです。

島根県の石州瓦のブランド力の考察

ところで、石州瓦の知名度のわりには、そのベースとなった石見焼の名はあまり聞きません。

江戸時代から明治、大正、昭和にかけて、石見焼は水瓶の全国的な人気によってその最盛期を迎えていました。

水道設備が未整備だった時代、水瓶は生活用水や農業用水の確保のためなくてはならない必需品で需要が多かったのです。

ところが、昭和になって上水道設備が普及し始めると一気に需要は減退。特に、大戦終結以降の落ち込みは顕著でした。

一方、石州瓦については、日本の高度成長による建設需要の急増によってその後も成長を続け、三大産地の一角を占めるまでになり、近代産業に転換された現在、島根県を代表する産業の一つでもあります。

ここから汲み取れる教訓は、製品の社会的な需要が尽きるときに、どのようにブランドを維持するかということです。

どのような製品も、新たな技術の開発や時代の流れによって、栄枯盛衰の歴史をたどる運命にあります。

しかし、製品の寿命は尽きても、ブランドは永遠です。

受け継がれた技術と品質に対する信頼をベースに、時代に対応する製品を生み出すことができれば、さらなる発展も可能です。

このよい例が、皮革製品で知られるエルメスです。

もともとエルメスは馬具工房でしたが、自動車の普及による馬車の衰退を予見し、バッグや財布などの日用品に事業の主力を引き換え、現在に至ります。

その成功の要因になったのは、馬具工房時代に築いたブランド力です。

フランス皇帝やロシア皇帝などヨーロッパ貴族を顧客に持っていたエルメスは、もともと最高グレードのブランドを持っていたわけです。

その高い権威が皮革製品になっても引き継がれ、ブランド製品の中でも高いポジションを持っているわけです。

つまり、石見焼の瓶製品はその社会的な使命を終えましたが、その伝統は石州瓦へと引き継がれています。

また、かつての主力商品だった瓶の需要が終焉したことで、ブランドの消滅の危機にあった石見焼ですが、丈夫で長持ち、低温や塩にも強いという性質を利用した梅坪や糠瓶などに活路を見出し、復活の兆しを見せているということです。

参考:
屋根の学校(石州瓦工業組合)
一般財団法人島根県石央地域地場産業振興センター

石州瓦の商標登録情報

登録日 平成19年(2007)3月9日
出願日 平成18年(2006)5月11日
先願権発生日 平成18年(2006)5月11日
存続期間満了日 平成29年(2017)3月9日
商標 石州瓦
称呼 セキシューガワラ
権利者 石州瓦工業組合
区分数
第19類 島根県石見地方産の粘土瓦
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