石川県の地域ブランド 「牛首紬(うしくびつむぎ)」

石川県の地域ブランド商標である牛首紬(うしくびつむぎ)は、平成19年(2007)1月5日、石川県牛首紬生産振興協同組合によって地域団体商標に登録されました。

特殊な原料を使い、石川県のみに残る技法によって生産される牛首紬は、独特の個性を放つ地域ブランドです。

その技術とブランドが現代まで引き継がれるまでには地域の人たちの大変な苦労があったようです。

目次

石川県の地域ブランド商標牛首紬とは

商標の由来は牛首村から

石川県白山市で生産された「紬織物」、「帯」、「長着」のみを牛首紬の商標で呼ぶことができます。

優美な絹織物に似つかわしくないちょっとぞっとしない商標は、石川県の牛首村と呼ばれた地域で確立された製法に由来します。

二頭の蚕がつくる特殊な玉繭が原料

石川県の牛首紬は、名前だけではなく原料や製法も変わっています。

まず原料です。

通常、紬は真綿を紡いだ紬糸を使うところ、牛首紬は絹糸を使います。

それも、ただの絹糸ではありません。

2頭以上の蚕によって作られた玉繭(たままゆ)と呼ばれる特殊な繭から挽かれた玉糸という貴重な糸を使います。

玉繭は全繭玉の2%しか存在しないといわれています。

複数の蚕が同時に糸を吐いてつくるので、普通の繭より大型になる半面、形がいびつです。

糸が絡み合ってしまっているため、一本の糸をきれいに挽き出すことができず、でこぼこの節ができてしまいます。

しかし、その節が味になり、同時に、強靭さを生みます。

牛首紬だけに伝わる独特な製法

特殊な玉糸を使い、さらに、糸に空気を含ませる独自の処理法により、柔らかな着心地を実現しています。

同時に、玉糸が生み出す強靭さから、釘に引っ掛けても破けないどころか、反対に釘を抜いてしまうほど丈夫ということで、別名「釘抜紬」と呼ばれています。

また、通常、紬は織った後に生地を染める後染めが一般的なのですが、牛首紬は先に染めた糸で織る先染めと通常の後染めの2種類あります。

牛首紬の定義

牛首紬は地域団体商標に登録されているほかに、石川県指定無形文化財、経済産業大臣指定伝統的工芸品、石川県牛首紬生産振興協同組合認定織物などの指定を受けています。

それぞれに、牛首紬の定義づけがなされているのですが、総合すると、次の通りです。

  1. 横糸に玉繭から挽いた玉糸を使用している
  2. 縦糸に生糸を使用としている
  3. 高機によって織られている
  4. 先染め、もしくは、後染めの平織り

生産された製品は、石川県牛首紬生産振興協同組合による組合検査、金沢織物検査場による外部検査に合格して、初めて牛首紬の商標で販売することができます。

石川県の地域ブランド商標牛首紬の歴史

牛首紬の発祥から最盛期まで

牛首紬が石川県で生産されるようになったのはいまから800年ほど前だと言われています。

きっかけはよくわかっていませんが、現代に残る伝説によると、平治の乱で都を追われた源氏の落人が白山(現在の石川県白山市)に住み着き、機織で生計を立てるようになると、その品質の良さから評判になり、村人にも手ほどきしたのが始まりと言われています。

江戸時代の文化・文政期になると、石川県の白山を中心とする白峰地方は天領となり、幕府の保護のもと、織物産業が奨励され、牛首紬も全国的に知られるようになりました。

大正時代に入ると、牛首紬中興の祖である水上鶴吉が会社組織による本格的な牛首紬の生産を開始したことにより最盛期を迎え、結城、大島と並ぶ日本3大紬の一つに数えられるまでになります。

ところが、太平洋戦争による生産の縮小と、その後の繊維産業全体の衰退にともなって牛首紬の生産も急速に縮小していきました。

やがて、牛首紬の興隆の最大の功労者である水上氏が廃業に追い込まれると、主だった生産者はいなくなってしまったのです。

存亡の危機を救った2人の功労者

わずかに、白山市の加藤織業場がたった一軒で細々と生産を続けていましたが、家族経営の小さな工場で、しかも本業の傍らのため、1年間に生産できる反物は約40反のみ。

それでも、加藤織業場が生産を続けたことで、牛首紬の製法が失われることなく現代に受け継がれることになり、昭和51年、その功を称え、加藤氏に黄綬褒章が送られました。

牛首紬の存続に功績を残した人がもう一人います。

西山産業の西山鉄之助氏です。

西山産業は繊維業とは無縁の建設会社でしたが、牛首紬の生産が存亡の危機に立っていることを知った西山鉄之助氏が、地域の特産品が失われることを憂い、社内に生産部門を新設したのです。

まったくの異業種からの参入でしたが、西山社長の熱意を汲んだ水上氏の子孫によって、牛首紬の技術と商標を譲り受けることができ、本格的な操業に入りました。

昭和53年になると、牛首紬技術保存会が設立され、生産者が拡大。

さらに、58年には生産者共同で石川県牛首紬生産振興協同組合が結成され、現在に至っています。

参考:
石川県中小企業団体中央会
石川県牛首紬生産振興協同組合
石川県白山自然保護センター編集「はくさん」第12巻1号

牛首紬の商標登録情報

登録日 平成19年(2007)1月5日
出願日 平成18年(2006)4月3日
先願権発生日 平成18年(2006)4月3日
存続期間満了日 平成39年(2027)1月5日
商標 牛首紬
称呼 ウシクビツムギ
権利者 石川県牛首紬生産振興協同組合
区分数
第24分類 石川県旧牛首村に由来する製法により白山市で生産された紬織物【類似群コード】16A01
第25分類 石川県旧牛首村に由来する製法により白山市で生産された紬織物の帯・長着【類似群コード】17A03
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