岐阜県の地域ブランド「美濃焼」

美濃焼は、岐阜県の生んだ地域ブランド商標の代表格です。

現在は、岐阜県陶磁器工業協同組合連合会(岐阜県多治見市東町一丁目9番地の3)と、 岐阜県陶磁器卸商業協同組合連合会(岐阜県多治見市明治町二丁目4番地)によって、地域団体商標に登録されています。

全国に焼き物の産地は数多くありますが、岐阜県の美濃焼は食器の生産で全国シェアの約60%を占め、和食器にいたっては90%に達するほどの一大ブランドです。

なぜこれほど圧倒的なシェアを誇るまでになったのでしょうか。

目次

岐阜県の美濃焼とは

美濃焼は、岐阜県東部の東濃地方と呼ばれる多治見市、土岐市、瑞浪市で生産される焼き物の総称です。

非常に有名なので、誰もが一度はその商標を聞いたことがあると思います。

しかし、どのような特徴を持った焼き物かと聞かれるとなかなか思い浮かばないのではないでしょうか。

美濃焼は、主なものだけでも15種類にも及ぶ個性的な陶磁器ブランドの集合体です。

織部、瀬戸黒と言ったらどんな焼き物なのか何となく想像できると思いますが、実はこれらも美濃焼の一種なのです。

いわば親ブランドと子ブランドの関係です。

岐阜県東部では昔から焼き物作りが盛んで、古墳時代の遺跡からも焼き物が大量に出ることから、その歴史は筋金いりと言えます。

その理由は、原料となる良質な粘土が豊富にとれるためです。

奈良時代ごろになると本格的な生産が始まり、織部や瀬戸といった各地域でそれぞれ産地化が図られ、各々の興隆や競い合いにより品質も高まり、様々な個性的な焼き物が誕生しました。

江戸時代ごろには一大集積地として発展しました。

岐阜県の美濃焼の魅力は価格の安さ

美濃焼の魅力と言えば、いろいろな種類の焼き物がそろっている点ですが、もう一つの魅力はリーズナブルな点です。

美濃焼の国内シェアは60%ですが、あくまで出荷数のことで、国内出荷額は40%台に下がります。

他産地に比べて平均価格が安いためです。

価格が安いのには理由があります。

江戸時代までは、美濃焼はそれぞれの地域の中で独自に進化し、子ブランドを持っていました。

しかし、明治時代に入り、藩の枠がなくなると、全国の産地が入り乱れての競争時代に突入します。

このとき美濃では、生産者が団結し地域別に生産する製品を振り分ける「製品別分業制度」を確立しました。

たとえば、「茶碗、湯のみ」は土岐市/土岐津/泉、 「皿」は土岐/肥田、「タイル」は瑞浪/陶などです。

それぞれの製品分野に特化して生産することで生産性を上げ、合理化が進んだことで大幅なコスト削減を可能にしたのです。

その後、殖産興業の波に乗り、陶磁器生産業の機械化、大規模化が図られ、他産地の追従をゆるさない一大産地に発展していったのです。

岐阜県の美濃焼の歴史

前述した通り、岐阜県東部では古墳時代から焼き物が生産されていたわけですが、美濃焼として確立したのは、1300年以上前の奈良時代のことです。

朝鮮半島から須恵器と呼ばれる無釉(釉薬を使わない)の陶器の生産技術が導入されたことに始まります。

手で土をこねて、地面に掘った穴に薪をくべて焼き上げる原始的な土器と比べ、須恵器はろくろを使って成型し、窯で焼き上げるもので、現在の陶器に近い形のものができあがります。

とはいえ、釉薬が使われていないので、水を吸うし、強度も劣り、装飾的な表現にも限界があります。

その後、国内で改良が加えられ、平安時代ごろには草木の灰を釉薬として使う「灰釉」の技術が愛知県で誕生し、これが美濃にも伝わりました。

安土桃山時代になると、茶の湯の文化の流行とともに、国内の陶磁器は一斉に品質が向上し、美濃でも、瀬戸黒、黄瀬戸、志野、織部など、国内を代表する陶磁器ブランドの数々が誕生し、これらのブランドがけん引する形で、日本独特の焼き物の文化が発達していったのです。

岐阜県の美濃焼のブランド力の考察

美濃焼のように、織部や古瀬戸など、コンセプトの異なるブランドをいくつも展開することを、ブランド・ポートフォリオ戦略と言います。

企業におけるブランド戦略は様々ありますが、複数のブランドを展開する戦略は、多様なマーケットに対して対応できることと、流行り廃りに強いというメリットがあります。

一つの強いブランドを作る戦略の場合、例えば価格の安さを前面に出して展開すると、今度は高価格帯を狙いたくても、どうしても低価格の印象がついて回ってしまうことになります。

あるいは、生活用品だけに強いメーカーが、まったく畑違いの分野である精密機械に手を広げると、違和感がありすぎて市場に受け入れられない可能性があります。

この点、複数のブランドを展開していることで、それぞれの市場に適したブランドコンセプトを打ち出すことで、いろいろなマーケットで対応しながら、ブランド全体の価値が最適化するようにポートフォリオを組み立てることができるわけです。

参考:
岐阜県陶磁器工業協同組合連合会
伝統工芸青山スクエア
織部ヒルズ
陶芸三昧
美濃焼くるくる

美濃焼の商標登録情報

登録日 平成19年(2007)2月23日
出願日 平成18年(2006)4月1日
先願権発生日 平成18年(2006)4月1日
存続期間満了日 平成39年(2027)2月23日
商標 美濃焼
称呼 ミノヤキ
権利者 岐阜県陶磁器工業協同組合連合会、岐阜県陶磁器卸商業協同組合連合会
区分数
第21類 かま,土鍋,土瓶,食器類,水筒,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器,卵立て,ナプキンホルダー及びナプキンリング,ようじ入れ,しゃもじ,すりばち,大根卸し,なべ敷き,はし,レモン絞り器,箸置き,食卓ベル,散蓮華,植木鉢,じょうろ,貯金箱,花瓶及び陶磁製水盤,風鈴,土鈴,香炉,せっけん入れ,歯ブラシ入れ,ろうそく立て,愛玩動物用食器,お守り,せっけん用ディスペンサー,ティッシュ取り出し用箱,置物,額皿
登録日 平成19年(2007)11月9日
出願日 平成18年(2006)10月18日
先願権発生日 平成18年(2006)4月1日
存続期間満了日 平成29年(2017)11月9日
商標 美濃焼
称呼 ミノヤキ
権利者 岐阜県陶磁器工業協同組合連合会、岐阜県タイル商業協同組合連合会
区分数
第19類 タイル
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