商標登録とは何か | 業界20年以上のベテラン弁理士が全解説

「商標登録するとどんな良いことがあるの?」
「商標登録ってどれぐらいお金かかるの?」
「商標登録ってみんなやってるの?」

こんなご質問を非常によくいただきます。

商標登録とは、一言で言うならば、自分の商標をお役所(特許庁)に届け出て、その商標を独占する権利(商標権)をもらう制度です。

しかし、なにぶん初めてのことが多いので、非常にわかりづらいですよね。

「本当にお金をかけて商標登録する意味ってあるの?」

そんな疑問を持ってインターネットで調べている方も多いのではないでしょうか?

恐ろしいことに『商標登録』をしていないと、最悪事業を継続できない場合があります。

例えば、他の誰かに先にABCという名前で商標登録されてしまった場合には、先にABCという名前を使っていても今後使えなくなってしまいます。

今まで使っていた名前を使えなくなるということが、皆さんの事業にどれくらい大きなダメージを与えるか、想像して見てください。

それを防止する唯一の手段が『他人に取られる前に自分が商標登録すること』なのです。

 

 

目次

そもそも商標とは?

商標とは『名前』や『マーク、目印』のこと

商標とは、英語では『Trademark』というくらいで、trade(商売)に使用するmark(マーク、目印)のことを言います。

特許庁のホームページでは、下記のように説明されています。

商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
引用:特許庁ホームページ「商標とは?」より抜粋

しかしこれだけ聞いても、ピンとこないですよね。おそらく例を挙げて見ると、よくわかると思います。

商標の最も典型的な例は、以下の2つです。

  1. 商品名、店名などの『名前』
    「商品名」「ブランド名」「会社名」「店名」「屋号」「サイト名」など、事業をする上で使ういろいろな「名前」は典型的な商標です。
  2. ロゴマークやシンボルマーク
    ロゴマークとは、デザイン化されたマークの中でも文字を含むものを言います。一方、文字を含まない図形だけのシンボルマークも重要な商標です。

こうやって聞くと、事業をやっている人ならば、少なくとも1つは自分の商標を持っていることに気がつきますよね。

しかし、まだピンとこない方もいるかと思いますので、百聞は一見にしかず、次は誰もが知っている有名な商標の例を見てみましょう。

 

文字商標の例

商標登録番号第2200242号の画像

言わずと知れたスターバックスの商標です。文字だけで構成された商標となります。お店の名前(カフェの名前)として有名なだけでなく、スターバックスブランドでコーヒー豆なども販売していますね。

 

図形商標の例

商標登録番号第4806987号の画像

これも同じくスターバックスの商標。文字と図形(絵)を組み合わせてデザインしているので、先ほども説明した「ロゴマーク」ですね。しかも、色付きです。

 

商標登録番号第5452171号の画像

スターバックスの商標3つ目。このように文字が含まれない図形のみの『シンボルマーク』なども商標の一種です。

「へえ、こんなのも商標なんだ!」と新しく知った方も多いと思います。私の経験上、『文字』だけを商標だと誤解している方は結構います。

一方、逆に『ロゴマーク』のみを商標だと誤解している方もいます。どちらも、重要な商標ですので、今回は是非、この2種類の商標だけでも覚えていってくださいね。

 

商標登録の重要な4つの機能とは?

ここまでの説明で、商標登録の主な働きが『商標を独占する権利(商標権)』にあることは、皆さんもなんとなく気がついているのではないでしょうか?

しかし、なぜかぼんやりとして明確に理解しづらいのは、「商標を守る以外にどう活用すればいいのか分からない」という理由があります。

実はあまり知られていないのですが、『商標登録』には4つの重要な機能があります。

  1. 出所表示機能
    品質や管理の責任を持っているのはどこかを表す機能
  2. 識別機能
    似た名前のブランドが出てこないように差別化する機能
  3. 品質保証機能
    ブランドを定着させて品質を保証する機能
  4. 宣伝機能
    覚えやすい名称やマークをブランド化すると商標が口コミされやすくなるという宣伝機能

特に知られていないのは、『識別機能』『宣伝機能』の2つです。

識別機能の例として、たとえば同じ羊羹(ようかん)でも、品質に自信があって、「ただの羊羹じゃない。◯◯屋の羊羹と覚えてほしい」と思ったとします。

そこで羊羹という一般名称ではなく、◯◯羊羹という独自の商標をつけて、他者の商品と区別しようとしますよね。

この時、『◯◯羊羹』と商標登録すれば『◯◯羊羹』に似た名前の羊羹は今後出てこないようにできるわけです。

宣伝機能の例で言えば、スターバックスが良い例で、『スターバックスのマーク』や『スタバと言った呼び方』が印象に残りやすく、口コミを起こしやすくしています。

この口コミを起こしやすくしているのも、商標登録をしていることで『スタバ』という言葉に似たカフェが出てこないようにしているからなんです。

詳しくは『商標登録の4つの働き』を読んでみてくださいね。

 

商標登録の流れとは?

商標登録をする方法をざっくりと説明すると、次の通りです。

  1. 商標登録できそうかどうか「調査」する
  2. 商標登録にかかる「費用」を把握する
  3. 願書を作成して特許庁に提出する
  4. 特許庁から「審査結果」が通知される
  5. 商標登録完了

商標登録の概要から流れについては『商標制度の概要から商標登録の流れまでを理解する』をご覧くださいね。

なお、これらの作業は全て自分でやることもできますが、商標登録の専門家である「弁理士」に依頼すると、ほぼ全ての作業を弁理士がやってくれて、自分ですることはほとんど何もありません。

弁理士に商標登録を依頼して完了するまでの流れは『商標登録完了までの流れを図解』で分かりやすく解説していますので、ご覧ください。

 

商標登録の方法とは? | 3STEPで商標登録が完了

①商標登録できそうか『調査』する

商標登録の基本的なルールとして、類似している商標が登録されていた場合、こちらは商標登録することができません。

そのため、すでに似たような商標が登録されていないかを調べることが重要となります。

商標登録できそうかの調査は、特許庁のデータベースで行います。

しかし、この調査は「正確」にやろうと思うとかなり専門的な知識が必要となります。

商標専門の弁理士であっても、決して易しくはない仕事です。

そのため「この商標は確実に商標登録したい」「この件は絶対失敗はできない」という場合は、調査の時点で弁理士に相談するのが正確な登録を行うことができます。

 

②商標登録にかかる『費用』を把握する

自分で商標登録を行う際にかかる費用は、基本的に特許庁にお支払いする『出願手数料』『登録手数料』だけです。

以下、区分ごとに合計額がどのように変わっていくかを『登録期間5年の場合』と『登録期間10年の場合』に分けて表にまとめてみました。

区分について詳しく知りたい場合には『商標を登録するには分類を決める』をご覧くださいね。

 

<商標登録期間5年の場合>

※表は横にスクロールできます

区分数 出願手数料 登録手数料 合計
1区分 12,000円 16,400円 28,400円
2区分 20,600円 32,800円 53,400円
3区分 29,200円 49,200円 78,400円
4区分 37,800円 65,600円 103,400円
5区分 46,400円 82,000円 128,400円

 

<商標登録期間10年の場合>

※表は横にスクロールできます

区分数 出願手数料 登録手数料 合計
1区分 12,000円 28,200円 40,200円
2区分 20,600円 56,400円 77,000円
3区分 29,200円 84,600円 113,800円
4区分 37,800円 112,800円 150,600円
5区分 46,400円 141,000円 187,400円

 

また、弁理士に依頼するときの費用は、もちろん、自分で商標登録の手続きをするときは発生しません。

弁理士に商標登録を依頼する際の費用については『商標登録出願の費用相場について実務経験20年以上の弁理士が解説』で費用相場まで詳しくまとめていますので、ご覧ください。

 

③願書を作成して特許庁に提出する

商標登録をするために特許庁に提出する書類を「願書」といいます。

願書の様式は、特許庁のWebページに記載してありますので、もし自分で願書を書きたいと考えている方は『商標登録願の書き方』を参照してくださいね。

願書に記載する事項の中で、重要なものは下記の2つです。

  1. 商標(商標登録したい商標)
  2. 指定商品・役務(その商標を独占的に使いたい商品、サービスの分野)

①の『商標』を記載するのは分かりやすいと思いますが、併せて②の『指定商品・役務』を記載する必要があり、非常に重要な部分であり『商標調査』と同じくらい自分で行うのが難しい部分になります。

なぜ難しいかと言いますと、上記の飲食店の例のように、必ずしも商標登録を行う分野は1つとは限らないためです。

例えば、『スターバックス』であれば、飲食店の名前である一方で、オリジナルのコーヒー豆も販売していますので、『飲食物の提供』だけでなく『コーヒー豆』も記載することが望まれます。

ウェブ関係の企業であれば、『ウェブサイトの作成』だけでなく、『プログラムの提供』『広告業』なども記載する必要があるかもしれません。

特に、最近のビジネスは複雑なものが多く、「飲食物の提供」のような一言では言い表すのが難しいビジネスも多く、必要な商品やサービスを不足なく記載するが難しい傾向にあります。

ですので、「失敗しないで確実に権利を取りたい」と考えるならば、弁理士に相談する方が正確に商標登録を行うことができます。

 

商標登録出願後の『特許庁の審査』とは?

提出した願書を審査官が審査する

さて、特許庁に願書を提出すればそれで商標登録になると思う方もいますが、そんなに簡単ではありません。

商標登録の流れとは?』で解説したように

願書を作成して特許庁に提出しても上記の④⑤が完了していないため審査を待つ必要があります。

商標登録が認められるには、特許庁の審査をクリアする必要があり、この審査がかなり厳しい審査なのです。

<特許庁の審査の厳しいポイント>

  1. 類似の商標が登録されていてもNG
  2. 登録NGの条件が細かく決まっている
  3. ちょっとの記載ミスで最初からやり直しになる
  4. 審査結果が出るまでの待ち期間が1年以上

特許庁では、提出された商標が『商標登録できるものか』を厳しく審査します。

法律では「こういうものは商標登録できません」というものが数十個も定められていて、正直、商標の専門家の弁理士も、手続きをする時には、何か見落としがないかドキドキするほどです。

記載ミスについても厳しく、一度願書を提出した後は、大きな修正をすることはできません。

また、現在の日本では、商標登録数が非常に多くなっており、特許庁の混雑ぶりが大変なことになっています。

今現在ですと、特許庁の審査待ち期間は、12ヶ月〜14ヶ月と発表されています(2019年12月現在)早期審査という特別な制度を使っても、3ヶ月程度はかかります。

 

登録査定とは?(審査結果が登録OKの時にくる通知)

厳しい審査の結果、特許庁の審査官が「登録OK」と判断すると、『登録査定』という通知が届きます。

これは、審査結果がOKというとても嬉しい通知なのですが、ここではまだ商標登録にはなっていないので、注意が必要です。

この通知が届いたあとに、特許庁にお支払いする『登録料(印紙代)』を納付して、商標登録が完了します。

 

拒絶理由通知とは?

審査の結果が「登録OK」となれば、商標登録完了と見て良いのですが、一方で審査結果が「登録NG」と伝えられることもあります。これが『拒絶理由通知』です。

先にも触れましたが、審査官は、商標登録できるかどうかについてかなり厳しく審査します。商標登録にならない典型的な例としては、下記のようなものがあります。

  1. すでに登録されている他人の商標と類似している
  2. 他人の有名な商標と類似していないる
  3. 普通名称、一般的な言葉など、特徴のない言葉である

その他、書類の記載の仕方に不備がある場合も、拒絶理由通知が来る場合があります。

拒絶理由通知が来た時は、何らかの対応をしなければ、そのまま最終的に、商標登録は却下という結論が確定してしまいます。

対応の仕方がわからない場合は、特許庁の担当審査官に電話をするか、弁理士に相談するのが良いでしょう。

 

まとめ

いかがでしたか?

今回の記事は『商標』の意味から始まり、『商標登録の機能』や『商標登録の流れ・方法・審査』に至るまで網羅的に解説してきました。

改めて商標登録の全体像を見渡すと自分で商標登録を行うにはかなりのハードルがあることも分かってしまいますね。

もちろんご自分で挑戦するのはすごく良い試みですが、時間もお金もかかってしまう商標登録を正確に出願したいと考えている場合には、やはり弁理士に依頼した方がスムーズに進みます。

アイリンク国際特許商標事務所では、お客様の視点に立ってどのように商標登録を出願するのが最善かを一緒に考えていきます。

おかげさまで「アイリンクが良い」と言って連絡をくれる方も多く、良いお付き合いをさせていただいています。

もしあなたが商標登録でお困りの際にはアイリンクにお任せしてみませんか?

親身にあなたのご希望を聞きながら最適な商標登録を実現したいと思っています。

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