特許庁が異議を認め「チバニアン」を論文や書籍で使用可能に

国際的な地質年代表記に、日本の研究チームが提案した「チバニアン」が採用される見通しです。

すでに国際審査を順調にパスし、快挙へ向けて動き出していますが、思わぬところで問題が起こりました。

研究チームが国際学会に申請した名称「チバニアン」が、無関係の第三者により商標登録されていたのです。

このままではせっかく年代表記が実現しても、「チバニアン」の名称が国内で使えなくなってしまいます。

そこで、国立極地研究所などが特許庁に異議を申し立てていたのですが、その判断が先ごろ下されました。

目次

チバニアンとは何か

まずは、「チバニアンとは何か」について。

地球の歴史はジュラ紀や白亜紀といったおおくくりの年代層だけでなく、さらに細かい年代層の表記があります。

それぞれの年代層を表す特徴的な地層が発見された場合、世界の学術界で基準となる国際標準として国際地質科学連合に申請し、認められると提出者に命名権が与えられます。

今回、日本の研究チームが申請したのは、約77万~12万6000年前の年代を表す地層で、千葉県で発見されたことから、「千葉時代」を意味する「チバニアン」と命名されました。

同じ年代層を同時期にイタリアのチームが申請し、日本と一騎打ちになっていましたが、一次審査で日本の「チバニアン」が選ばれ、大きくリードした形です。

地質年代層の表記については、歴史的に欧州勢が強く、アジアでは中国が申請したものが認められたのみ。日本はまだ未登録です。

実現すれば、地球史に初めて日本の地名が表記されることになります。

異議申し立てが認められる

さて、今回の本題はここからです。

研究チームが「チバニアン」を国際機関に地質年代名として申請しようと動く中で、すでに千葉県内の事業者によって「チバニアン」が商標登録されていることがわかったのです。

この問題については、すでに下の記事で取り上げていますので、詳しくは関連記事をごらんください。
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商標登録はビジネスで使用する商標を保護する制度なので、学術的な名称を登録することはできませんが、今回の場合は、学術名として使われる前に、まったく同じ商標がたまたま商標登録されてしまっていたということです。

特許情報から推測すると、チバニアンを商標登録した事業者は、千葉県のおみやげ物の商標として使う目的のようです。

指定区分が異なれば、使用には問題ありません。したがって、学術名として使用する分には、特に問題なさそうです。

ところが、日本の研究チームが懸念したのが、先に商標登録されていた「チバニアン」の指定商品に「印刷物」が含まれることです。

学術名として採用されれば、論文や書籍に表記されることになるだろうし、学術目的のイベントのチラシやパンフレットも印刷することがあるでしょう。

そうした活動に支障がでるかもしれません。

そこで、商標登録されている「チバニアン」の指定商品の中から「印刷物」を除外するよう、特許庁に対して異議申し立ていたところ、11月1日付で異議が認められたものです。

公共性を優先する判断

商標登録異議申立制度は、すでに商標登録されている商標に対して、誰でも登録の取消しや指定区分・役務、指定商品・役務の変更を求めることができます。

商標登録の異議が認められるケースとしては、商標が業界内で定着して一般名称化している場合や、他社の商標を無関係な第三者が先んじて登録してしまうなど公序良俗に反する場合などに限られます。

今回について、「チバニアン」を先に商標登録していた事業者に悪意や不正の根拠は見られず、たまたま同じ名称になってしまっただけのようです。

それでも、今回は、学術目的という公共性の高さを優先する判断が下されたようです。

参考:
印刷物の商標登録を取り消し 特許庁、研究チームの異議認める
地球史に「千葉時代」誕生へ 日本初の地質年代名、国際審査でイタリア破る

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