小田原市の地域商標を巡り業者を提訴

去る5月27日、地域団体商標の侵害を巡る裁判の口頭弁論が横浜地方裁判所小田原支部で開かれました。

訴え出たのは小田原蒲鉾協同組合です。

地域団体商標として登録していた名産の小田原かまぼこの商標を勝手に使われたというのもの。

地域団体商標についての訴訟は非常に珍しく裁判のゆくへが注目されています。

参考:地域商標「小田原かまぼこ」を「無断使用」と販売差し止め求める 業者側「登録前から使用」

目次

両者の主張は平行線

神奈川県小田原市のかまぼこ製造業13社が加盟する小田原蒲鉾協同組合が「小田原かまぼこ」を無断使用したとして、県内の食品関連業者を訴えたのは今年3月のこと。

小田原かまぼこは江戸時代に製造が盛んになり、箱根の湯治客に供する郷土料理として進化し、独特の味や製法が出来上がったとされます。

その小田原かまぼこの商標を保護するため、2011年、組合は小田原蒲鉾と小田原かまぼこの名称、及びロゴ4種を地域団体商標として登録しました。

参考:小田原蒲鉾

ところが、組合に加盟していない業者が小田原かまぼこ、小田原蒲鉾を含む商標を使って東京都内のスーパーマーケットなどで商品を販売したというものです。

組合は、業者を相手に販売の差し止めと約5000万円の損害賠償を求めて裁判を起こしました。

裁判では、組合側が「長期にわたって小田原かまぼこの品質維持と管理に努めており、全く同じ名称で販売するのは悪質」と主張。

これに対して訴えられた業者側は「組合が商標登録する前から名称を使用している」などと反論し、組合側の販売差し止め請求の棄却を求めました。

地域団体商標をめぐる訴訟は非常に珍しく、業界内外で注目されましたが、第一回口頭弁論では両者の主張は平行線をたどりました。

両者の主張は平行線

地域団体商標とは、団体の加盟者に使わせる目的で行う特別な商標登録です。

詳しくは、特別な商標登録、団体商標で解説しています。

地域の名産品や特産品の育成を目的とした制度で、地域組合、商工会議所、NPO法人など一部の団体にのみ登録が認められています。

一般的に、商標として認められにくい地名と一般名称の組み合わせでも登録が可能になるなど、審査の要件を緩和されているのが特徴です。

小田原かまぼこも地域団体商標の制度を使って商標登録しました。

団体で登録すれば組合員全員で商標を使用でき、地域の特産品や名産品の知名度アップやブランド戦略に有利になるなどのメリットがあります。

しかし、実務上では、地域団体商標を巡る裁判は稀です。

過去には、博多織工業組合が商標登録した博多織と一字違いの博多帯を販売していた業者を告発したケースがあります。

このときには、商標を使用した業者が以前に組合への加入を望んだのに組合側が拒否していた事実などがあり、工業組合の訴えが退けられるという結果になりました。

今回のケースでは、業者が言うように、組合が商標登録する前から使用していたのが事実なら先使用権が認められる可能性もあります。

一方、組合はすでに商標登録していますので、出願主義を前提とする商標法の中では、先に出願した組合側が有利になります。

いずれにしても難しい判断がせまられる今回の裁判、どのような判決がでるのか注目されています。

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