不正改造して販売したことは商標法違反に当たると司法が判断

アップル社のスマートフォンを「脱獄」と呼ばれる手口で不正改造を行った上で販売したケースに対する裁判が行われ、千葉地裁が5月18日、容疑者の男に懲役1年6カ月、執行猶予3年、罰金50万円の判決を言い渡したことがわかりました。

この裁判が注目されたのは、男が問われたのは商標法違反だったからです。

スマートフォンそのものはアップル社の純正品。

それが、改造を加えたとはいえ、第三者に販売したことが商標法違反に問われるなら、手持ちのスマホをオークションなどで販売するのは違法にならないのでしょうか。

目次

アップルが認めていない改造を施したことが問題

事件の経緯から振り返ってみましょう。

被告の男は、2016年3~5月ごろ、米アップル社のスマートフォン6台を、OSに不正な改造を加えた上で販売した罪に問われています。

OSに改造を加える手法は「脱獄」と呼ばれ、アップル社の承認を得ていない非公式アプリが使えるようになるとされ、一部で横行していたようです。

アップル社はOSの改造を認めていないため、規約違反に相当します。

とはいえ、アップルという民間企業が定めているルールにすぎず、アップル社から損害賠償を訴えられたり、商取引上のペナルティが課せられることはあっても、犯罪に問えるかどうかが焦点でした。

OSに手を加えたといえ、本体は間違いなくアップルの純正品であり、見方によっては中古品を転売したのにすぎないからです。

改造を加えたら元の製品とは違うもの

一般的に、自動車などの一部の製品については、安全性の問題などから不正改造そのものが違法になりますが、スマホのOSをいじることそのものは違法ではありません。

また、購入者も、OSが改造されていることを承知の上で、むしろ、そのことに価値を感じて購入していたものです。

では、今回のケースではなぜ違法とされたのでしょうか。

さらに、OSを不正に改造したことが、不正競争防止法違反や器物損壊ではなく、なぜ商標法違反なのでしょうか。

判決の要旨をかいつまんでいうと、違法性があると認定されたのは次の点です。

  • OSを改造したことで、アップル社の純正品とは言えなくなった
  • アップル社の純正品ではない以上、アップル社のロゴマークや商標を使用したことは商標法違反に当たる
  • 個人どうしの売買の範疇を逸脱し、職業的に改造と転売が繰り返されており、アップル社の信用に与えるリスクは過誤できない

OSをいじっただけで別物と言えるか

通常、個人で持っていた製品を中古品として転売する限りは、商標権侵害になりません。

しかし、改造を加えると、その改造の程度によっては、まったく異なる製品とみなされて、商標権侵害になりえます。

たとえば、これが、カラーリングを施した上で再販売したとすると、機能や性能はまったく変わっていないため、商標法にはならないでしょう。

しかし、外形だけ残し、中身の機構や電子基盤をそっくり入れ替えてしまえばもはやiPhoneではない別の代物ですので、「iPhone」だとして販売したら商標法に触れることになります。

この問題が微妙なのが、OSというソフトだけをいじったことによって、元のiPhoneとは別ものと言えるかどうかです。

裁判では、この点で、「別物」と判断しましたが、法律の専門家である弁護士や弁理士の間でも意見が分かれており、物議をかもしそうです。

参考:
朝日新聞 「脱獄」iPhone販売の被告有罪 千葉地裁判決
FNN 「脱獄iPhone」販売で有罪判決
Snkei Biz “脱獄スマホ”販売に有罪 裁判官「不具合、アップル社の責任と誤認の恐れ」 千葉地裁
テレ朝ニュース 「脱獄iPhone」を“販売” 25歳の男に有罪判決
NHKニュース 不正改造のiPhone販売した罪で有罪判決

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