悪意ある商標の出願が多発、特許庁が注意呼びかけ

去る5月17日、自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)という一文が特許庁の公式ページで公開されました。

何者かが他人の商標の先取りとなるような商標登録を大量に出願しているので注意をしてほしいということです。

他人の商標を勝手に商標登録することはもちろん認められません。

いったい何の目的でこのようなことをするのでしょうか。

あるいは、まかり間違って商標登録が認められてしまったら、本来の商標権者は諦めるしかないのでしょうか。

目次

商標を勝手に出願されても慌てない

他人が使用している商標を本来の商標権者に先んじて無断で登録し、商標登録の制度を悪用しようとするケースが以前から報告されていました。

他人の商標を勝手に登録することは通常はできません。

審査によって拒絶される可能性が高いと言えます。

実際、今回の問題については、出願手数料が支払われていないなど、手続上問題があるケースがほとんどです。

手数料が支払われない限り、出願から一定期間過ぎると、特許庁では却下処分を行っていますので間違って登録されることはありません。

仮に出願手数料が支払われたとしても、商標法では、出願人の業務に関係のない商品や役務に使用する商標や、他人の著名な商標の先取りとなるような出願を認めていません。

また、他人の商標を勝手に出願する輩は、たいてい常習犯です。

一般的な常識の範囲を超えて、大量の出願をしているもので、それ事態、商標を業務に使う目的として疑わしいので、拒絶理由となりえます。

いずれにしても、他人の商標を勝手に出願しても、商標登録することはほぼ不可能です。

しかし、商標登録をいったん出願すると、出願公開公報や特許庁の特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で出願中であることが公表されるため、本来の商標権者が先に登録されてしまったと勘違いすることもあります。

出願中は、あくまで出願しただけです。

認められたわけではありません。

そこで、特許庁は、商標登録を断念することのないようご注意してほしいと呼びかけたというわけです。

目的はライセンス料か

却下されることを分かっていて、なぜ他人の商標を勝手に商標出願するのか。

考えられる目的は、本来の商標権者にライセンス料を要求することです。

日本の商標についての考え方は先出願主義を採用しているため、商標を作った人ではなく、先に出願した人に登録する権利が認められることになっています。

そこで、そのうち商標登録されそうな商標を先に出願しておいて、本来の商標権者が現れたときに、商標を使いたければライセンスを払えというわけです。

もし、自分の商標が誰かによって勝手に商標登録を出願され、ライセンス料を要求されたり、売却を持ちかけられたりしても応じないことです。

今回のケースでもそうだったように、基本的に他人の商標を勝手に登録できないので、ほとんどの場合、登録は認められません。

下手に交渉しようとすると、相手が食い下がってきて面倒になることがありますので、却下されるまで何を言われても無視して放っておくとよいでしょう。

確実なのは先に商標登録を済ませておくこと

他人の商標を勝手に出願しても、登録が認められることはほとんどないと言いました。

ほとんど、ということは、稀に認められることもある、ということです。

商標法を悪用する悪質な業者にとってはそこがねらい目です。

大量の商標を矢継ぎ早に出願し、まかり間違って審査が通ったらそのときに手数料を支払えば、正式に登録が認められます。

すると、独占排他的に商標を使用する権利が与えられ、本来の商標権者に損害賠償を請求するさえこともできてしまうことになります。

過去には、民進党という商標を民進党自身が出願する前に大阪の民間企業が出願してしまったことが実際にありました。(2016年5月21日現在、登録はされていない)

そんな事態になっても何とかなります。

他人の商標を勝手に拝借して登録したとしても、使用している実態もなければ、業務上の必然性もありません。

本来の商標権者に先使用権がある事実をつきつけ、応じなければ裁判などで商標登録を取り消させることも可能です。

とはいえ、本来なら必要のないはずの裁判に巻き込まれるなど、非常に面倒なことになるのは避けられません。

無駄な費用と貴重な労力を割かれないためには、自らの商標を登録しておくことがもっとも確実な権利防衛だと言えます。

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