ネーミングをめぐる物語 「ソニー/SONY」

家電やオーディオ機器、イメージセンサーなど半導体、放送機器、記録メディアなどのエレクトロニクス機器の製造販売から、映画、音楽などのエンターテイメント、総合金融サービスまで、多用な事業から成るソニー。

今でこそ世界中で知らない人はいないほどの大企業となっていますが、その歴史はどのようなものだったのでしょうか。

今回は、ソニーの歴史について追ってみたいと思います。

目次

商標SONYの由来

ソニー(SONY)という商標は、音『SONIC』の語源となったラテン語の『SONUS (ソヌス)』と、英語で「小さい」「坊や」という意味の『SONNY』から来ています。

簡単に覚えられて、かつ、どこの国の言葉でもだいたい同じように読めて発音できる、という点を重視して考案された商標でした。

オーディオメーカーが母体になっているだけあって音にこだわったところがいかにもです。

加えて、当時から世界を視野に入れていたということが商標からわかります。

ソニーの前身である東京通信工業株式会社(東通工)は、1955年、当時はまだ小さな会社でしたが、世界に羽ばたく夢を持っていたのです。

ところが、渡米中だった盛田氏(当時専務。後に社長、会長を歴任)のもとにアメリカの大手時計会社から1つの申し出があります。

「無名のSONYブランドでは売れない。わが社のブランドで売らせてくれるのなら、10万台のトランジスタラジオを注文しよう。」

無名の小企業、東通工にとっては破格の条件の取引です。

しかし、盛田氏は「SONYブランドでなければ意味がない」と断りました。

さらに、ソニーの商標を使い始めてから3年後の1958年、社名も商標とおなじ「ソニー株式会社」にしました。

同じ時期にライバルとして競っていた主な同業者は、松下電器、三菱電機、東京電機、芝浦電気でした。

ライバルの社名を見るとわかりますが、その頃は社名の中に電気メーカーであることを意味する文字をいれるのが当然でした。

ブランド名だけの社名は、当時としては大変に異質なものでした。

しかし、時代を経て世界規模の市場に参入する際に、同業者は日本風の社名でのブランディングがやりにくく、複数の商標を使い分けるなどの不便があったそうです。

そうしてみると、世界に通じる商標を早くから志向していたソニーのネーミングセンスがいかにすぐれていたかわかります。

SONYのロゴ商標へのこだわり

ソニーでは、創業当初からブランドネームである“SONY”の文字だけのシンプルなロゴを大切にし、使い方にもこだわってきました。

最初のロゴは、1955年に初めてSONYを商標登録した時に作成されたもので、このときのロゴ商標は頭文字のSがデフォルメされた、やや尖ったデザインでした。

しかし、後に、活字に近いシンプルなロゴに統一されるようになります。

とてもシンプルでありながら、デザインへのこだわりは強く、初代デザイン室長には将来を嘱望されていた大賀典雄氏(後に社長、会長を歴任)に託されました。

SONYの四文字が連続した文字の塊として美しくバランスよく見えるようにと、何度か手が加えられ「文字が細い」「Sの字が歪んで見える」等、細かな違和感を払しょくしていき納得するスタイルに落ち着いたのは、最初のSONYの商標ロゴから数えて6番目、1973年のことでした。

ソニーが創立35周年を迎えた1981年、「新しいロゴをつくろう」と世界からデザインを公募したこともあったのですが、結局、経営陣の「今のロゴのほうが明快で良い」という判断で、1973年にできたデザインがその後も守り続けられています。

1982年には、唯一のビジュアルアイデンティティーだったSONY という文字のロゴ商標に加えて、絵のみの商標と、音のみの商標も誕生しています。

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