ネーミングをめぐる物語「ゴキブリホイホイ」

殺虫剤や衛星薬品の製造、販売を行なっていることで有名な日用品製造のメーカー、アース製薬株式会社が開発した「ごきぶりホイホイ」。

ストレート且つインパクトが強いそのネーミングに秘められた開発者たちのドラマをご存知でしょうか。

今回は、ごきぶりホイホイが生まれた経緯と、そのネーミングの由来を追います。

目次

ホイホイと簡単にはいかなかった、ごきぶりホイホイの開発

1960年代から70年代は、マンションなどのコンクリート製の建物が増え、人々の住環境が大きく変化しました。

それと同時に今までは屋外で生息していたゴキブリの生息環境も家屋内に移り、多くの人が黒光りする小さな侵入者を部屋の中で見かけるようになります。

当時は駆除の為に使用されていたのは生け捕りにするタイプで、捕獲後は水につけるなどして殺処理をしなければならず、奥様方には大変な負担になっていました。

こうした背景を考慮し、不快さを取り除き、これに対抗できる商品の開発をはじめたのが、ごきぶりホイホイ誕生の第一歩でした。

1971年のある夏の日、当時の社長・大塚正富が工場へ向かうバスの中でセミの鳴き声を聞いた時、子供の時にトリモチでセミを捕まえていたことを思い出したことをきっかけにプロジェクトチームが発足しました。

彼らが考えたのは、紙の箱に粘着剤を仕込み、捕獲後はその箱ごと捨てることができるというアイディアです。

現在のごきぶりホイホイの形は既に描かれていたようです

しかし敵もさるもので、鋭敏な触覚で粘着剤に触れ危険を回避してしまうなど、なかなか一筋縄にはいかず研究は難航しました。

箱の形状や粘着剤の原料についても試行錯誤し1973年にようやく販売にこぎつけました。

会社を救ったネーミング「ごきぶりホイホイ」

1970年に社長に就任した大塚正富は家庭用殺虫剤の市場でわずか2%のシェアしか持たない自社の将来を危惧し、「3年以内に会社を立てなおす商品を開発し、世に送り出そう」と呼びかけ、自らも模索に明け暮れていました。

この3年目に発表されたのが「ごきぶりホイホイ」でした。

開発当時は怪獣ブームであったことから「ゴキブラー」というネーミングが検討されていました。

しかし、実際にパッケージにすると、怖くおどろおどろしいイメージになってしまい発売直前に没採用となります。

「ホイホイ捕れる」という機能性が伝わりやすく、親しみやすいことから「ごきぶりホイホイ」というネーミングが誕生し、そのわかりやすいネーミングが爆発的ヒットの一因となります。

1月に発売を始め、ごきぶりが発生し始める頃になると生産能力を超えるほどの注文が殺到し「ホイホイ捕れて。ホイホイ売れて、ホイホイ儲かる」と言われたほど売れに売れ、ごきぶりホイホイが発売されたひと夏だけで会社は黒字転換しました。

わずか2%だった業界シェアは現在50%。

その原動力となったのは「ごきぶりホイホイ」と、その開発者たちの不眠不休の努力だったのです。

参考:ごきぶりホイホイ~10名のチームが実現させた会社の復興~

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次