地域の知的資産を守り強化し、次世代に継承するブランド戦略を可能にする地域団体商標とは

特許庁が運用するインターネット番組、「商標チャンネル」から、第3回放送、「『商標で地域ブランド振興』~地域団体商標が地域ブランドの育成を支援する!~地域団体商標制度の概要編」を紹介します。

この動画は、キャスター木村久美さん、解説峰剛一氏のコンビで、商標に関する情報を伝える番組です。

今回の放送では、地域ブランドを商標登録できる特別な制度、「地域団体商標」について解説しています。

3.『商標で地域ブランド振興』~地域団体商標が地域ブランドの育成を支援する!~地域団体商標制度の概要編

目次

地域団体商標とは

地域団体商標とは、地域の特産品を地域ブランドとして知名度をあげ地域活性化を目指す動きに対応した商標登録の制度です。

地域の特産品は、地域名と製品名の単純な組み合わせになることが多く、これらの商標を早期に保護し、価値を守ることで地域ブランドの育成をサポートすることを目指しています。

現在は主に、農産品、水産品、畜産品、工芸品、あるいは温泉地など観光資源といった商標が登録されています。

地域団体商標に登録すると通常の商標登録と同様、無断で商標を使用された場合や、よく似たブランド名を使われた場合に、使用差し止めや損害賠償を請求できます。

また、地域団体商標はブランドを守るだけでなく地域の活性化などの効果を生むメリットもあます。

番組では、地域団体商標を登録し、地域ブランドの育成に取り組んでいる3つの事例を紹介しています。

地域団体商標活用事例1「黒川温泉」

黒川温泉観光旅館協同組合

熊本県阿蘇山のふもとに位置する任期のおんせん「黒川温泉」は、地域の旅館が一丸となり街全体を一つの宿としてイメージを作ってきました。

しかし、そうして人気が高まるとともに名前の模倣、無断使用が多くなり、黒川温泉を地域団体標章として登録することになりました。

商標登録することによってブランド名が高まるとともに、無断使用に対して使用をやめるように警告すると素直に従うようになったということです。

また、地域団体賞に登録したことにより、ブランドに対する意識も変化し、自分たちのブランドを磨いていくという意識が芽生え、ブランドに恥じないサービス、おもてなしをしようという意識がより強くなったという。

地域団体商標の登録によって、ブランドを守りブランド力の向上にも効果を発揮しただけでなく、地域の財産を次世代につなぐことにも役立った事例です。

地域団体商標活用事例2「豊岡鞄」

兵庫県鞄工業組合

兵庫県の豊岡地域は、鞄づくり1000年の歴史を持ち、全国シェアの80%を占める鞄の名産地です。

すでに圧倒的ブランドを築いている豊岡鞄ですが、地域団体商標に登録したことによって、組合活動が活性化されたそうです。

それまでは、組合員の数も減る一方だったのが、地域団体商標に登録してから、新たな人材、新規参入も流入しました。

地域団体商標登録したことにより信用度が高まり、下請けからメーカーにステップアップした組合員もあらわれました。

いままで受注生産しかしていなかった無名の生産者でも、「豊岡鞄」というブランドを使うことによってステップアップしやすくなるからです。

地域団体商標を活用することでイメージ向上だけでなく、組合の活性化と売上の向上も実現した事例です。

地域団体商標活用事例3「東川米」「大雪旭岳源水」

東川町農業協同組合

北海道大雪山のふもとに位置する東川町は、「東川米」、「大雪旭岳源水」の2つの地域団体商標を登録しています。

地域団体商標の登録によって全国的な知名度が高まり、東川町への流入人口が増えたということです。

もともと地域内の絆が強い東川町だったが、地域団体商標の登録によって組合の垣根を越えて地域が団結。地域みんなが「東川町の営業マンになろう」という気持ちが湧いてきたということです。

生産者の間でも、地域団体商標の登録によってブランドに対する責任感が一層と強まりました。

地域団体商標はブランドを守るだけでなく普及にもつながります。地域の魅力が周囲に伝わり、流入人口が増えるなど町おこしにも一役かっている事例です。

地域団体商標の登録を受けるには

地域団体商標に登録するには、通常の商標登録と同様、特許庁に出願書類を提出し、審査を受けて登録という流れですが、地域団体商標特有の性質として、出願する際に以下の4つの大きなポイントがあります。

1.出願人となれるのは誰か

登録主体となれるのは事業協同組内のほか、平成26年の商標法改正により、商工会、商工会議所、NPO法人でも出願可能となりました。

個人、株式会社、地方自治体、社団法人、任意の協議会は出願できません。

2.地域団体商標として認められるブランド名

地域団体商標として認められる商標の構成は3つ。

  1. 「地域の名称」と「商品またはサービス」の普通名称との組み合わせ。
  2. 「地域の名称」と「商品またはサービス」の慣用名称との組み合わせ。
  3. 「地域の名称」と「商品またはサービス」の組み合わせ、「商品の産地やサービスの提供を表すためによく使われる言葉」が追加された構成。

3.地域団体商標で使う地域の名称

地域の名称が商標に使用する商品またはサービスと密接な関係があるものでなければなりません。

出願の際には、地域の名称が提供場所、主要な原産地、製法の由来地など商品やサービスとの関係がはっきりするように記載する必要があります。

4.広く知られていること

地域団体商標に登録されるためには、商標が実際に使用されていて広く知られていることが必要です。

商標が実際に使用されていること、広く知られていることの証明として、出願する際に、団体または団体の構成員が商標を使用していることを証明する写真やパンフレット、商標として広く知られていることを証明する出荷伝票や新聞記事などの資料を提出します。

地域団体商標に登録することによる効果、まとめ

地域団体商標の登録によって以下のような効果が期待できます。

  • 商品サービスの売上・取引価格の上昇
  • 模倣品対策
  • 品質の維持向上
  • 商品サービスの宣伝・イメージ向上
  • 組合員のモチベーション向上

地域ブランドの価値を高めるためには品質を向上させ、消費者の信頼を獲得するという方向性が必然的に生まれ、これが全国的な知名度の獲得にもつながる流れを引き寄せるわけです。

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