「中国でビジネスを始めるから商標登録したい」
こうした希望を持つ経営者の方や個人事業主の方は実はたくさんいらっしゃいます。
しかし、外国の商標登録は日本国内よりも分かりにくく、情報もあまり出回っていないのが現状です。
日本の商標登録制度と中国の商標登録制度は違うにも関わらず、同じものと考えてミスをしたり、費用が大きくかさんでしまう方もいるようです。
突然ですがはじめまして、アイリンク国際特許商標事務所の井上と申します。
私の事務所は中国の外国専門スタッフとの長年の繋がりもあり、中国の商標登録で30年ほどのキャリアがあります。
弁理士の腕の見せ所である外国の商標登録に必要なこと、注意すべきこと、30年以上のキャリアで得てきた商標登録の具体的な方法を全てこの記事に注ぎ込んでいきます。
ぜひ期待して読んでいただけると嬉しいです。
あなたは日本で商標登録を行ったことはありますか?
日本で商標登録を行うと登録した商標は日本国内のみ守られます。
もちろん、日本のルールの中で守られるのです。
しかし、中国でも同じ商標を使われたくないと考える場合には、中国で中国のルールにしたがって商標登録しなければいけません。
国名 | 日本と中国の商標登録の違う点 |
日本 |
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中国 |
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また上記の表の通り、商標登録の基本はそこまで差はありませんが、それでも日本と中国の商標登録には多くの違いがあり、日本での商標登録のやり方をそのまま中国で行うことはできません。
中国で商標登録出願を行うには、以下の2つの方法があります。
直接商標出願については、法律的に現地代理人を立てる必要があり、中国の弁理士を探す必要があります。
中国の弁理士は、日本ほど弁理士資格を取得するのが難しくないために、きちんとした弁理士を選ばないと商標登録に失敗してしまいます。
国際商標出願は、 現地代理人として中国の弁理士を立てる必要はありません。
また、出願する国の数が多い場合には商標登録費用の割引も行ってくれるため、3カ国以上に商標登録出願を行う際によく使われる出願方法となっています。
まずは、日本と中国の違いを見ていきましょう。
日本の先使用主義という考え方は少し難しいかもしれませんので例題を出してみます。
例えば、Aさんが先に使っていたとユーザーに認知されている商標に関しては、Bさんが商標登録をしてしまっても、Aさんはその商標を使い続けることができるという考え方です。
先願主義に関しては、ほとんどの場合において先に商標登録をした人だけがその商標を使うことができるという考え方なわけです。
そのため、中国で商標登録を検討している際にはなるべく早く商標登録を行うことがビジネスを円滑にするためには必須なのです。
中国で商標登録をする際に、指定商品(小売・卸)または指定役務(サービス)の記載をする必要があります。
区分も日本と同じように45分類に分かれており、第1類から第34類までが商品区分、第35類から第45類までがサービス(役務)区分となっています。
中国での商標の種類については大きく5つあり、以下の表にまとめている通りです。
商標の種類 | 詳細説明 |
商品商標 | 商品につけられる商標(商品名)のこと |
役務商標(サービスマーク) | 例えば、飲食店における飲食物の提供などのサービス等につけられる商標(サービス名)のこと |
立体商標 | 立体的な形状からなる商標のこと |
団体商標 | 主に団体や協会などの組織名で登録される。その組織の構成員が商業活動をする際に、組織の構成員であることを証明する商標のこと |
証明商標 | 特定の商品又はサービスにつき、監督能力を有する組織が管理し、その組織の構成員以外の者がその特定の商品又はサービスについて使用することで、それらの原産地や原材料、製造方法、品質の保証が証明されるものです。ちなみに日本には、証明商標法はありません。 |
まずは全体像を把握しないと分かりにくいと思うので、要点だけをSTEP式で紹介していきます。
また、出願する際の注意点としては 、日本のように「1商標多区分1出願」はできない点です。中国は「1商標1区分1出願」と決められていることを頭に入れておきましょう。
中国で商標登録に必要な書類は大きく3つあります。
上記の3つを押さえて書類をまとめることができれば、準備書類はOKです。
マドプロを活用しなければ、基本的には現地の弁理士を代理人として立てなければいけません。
しかし注意したいのは、日本の士業(特に弁護士と弁理士)の平均的な実務レベル、ユーザーフレンドリー度合い、明朗会計度合いが非常に高いので、外国の士業が同じレベルであると想像していると痛い目を見るという点です。
また、何も情報がないところから現地代理人を探すのはかなり難しく、基本的には日本の弁理士事務所がお付き合いのある現地代理人に依頼するのが普通です。
しかし、この場合にも中国の商標登録を行った経験が浅い場合には、中国の代理人との信頼関係は薄い場合が多いです。
そのため、日本の弁理士を通して現地代理人に依頼した場合でも確実に申請を行ってもらえるか不安が残ります。
手前味噌で恐縮ですが、私、井上は中国の商標登録に関して様々な経験を積ませていただいており、得意分野と自信を持って言えるようになりました。
もし、少しでも不安を抱えている方がいらっしゃいましたら、井上に中国での商標登録を相談してみてはいかがでしょうか?
中国の商標登録完了までにかかる期間は1年~2年と言われています。
なぜこのような長い期間が必要なのかというと、日本よりも中国の方が約60倍ほど商標登録件数が多いという現状が影響しています。
また、年々外国出願件数も増えているため、今後さらに商標登録の期間が伸びる可能性もあります。
中国の商標審査基準では、漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベット表記・ピンイン(中国普通語の発音表記)は、それぞれ類似しないとされています。
例として、大根とダイコンは全くの別ものとして扱われるということです。
そのため、特に守りたい商標の場合には漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット表記、ピンインの全てで商標登録することをおすすめします。
日本では、商標権を侵害するケースはあるにせよ少なく、裁判に発展するケースはもっと少ないです。
日本はそもそも他の国と比較しても商標権を故意に侵害する方は少なく、日本が採用している先使用主義の考え方が功を奏しているという見方ができます。
日本では、仮に商標登録で一番乗りできたとしても誰かが先に使っていて、一定数に認知されていればその商標を独占できないからです。
しかし中国では、商標権の侵害は割と日常茶飯事であり、その大きな要因の一つとして先願主義の考え方があり、商標登録をいち早く行った方が独占できるというわけです。
こうした制度上の穴をついて、メイドインジャパンの商品を中国でいち早く商標登録を行う方が後を絶ちません。
実際にグローバル展開を考えている企業であれば、前もって商標登録しておくぐらい回り込んでおかないと「実はもうすでに登録されていた」なんてことも珍しくないのです。
しかし回り込んでおくと言っても、どう考え、どう対処していくべきかは経験とノウハウを持った弁理士でないとなかなか難しいかもしれません。
その点、私は得意分野でもありますので、気軽にご相談いただければ1回の相談だけで解決することも珍しくありません。
ぜひ一度、ヒアリングという形でお話を聞かせていただけると嬉しいなと思っています。
中国で「無印良品」の商標が争われた問題で、本家のはずの良品計画が無印良品とは関係ない中国の地元企業に敗訴するという結果が波紋を呼んでいます。
商標を含む産業財産権についてのトラブルには事欠かない中国ですが、勝手に商標を使われるならまだしも、訴え出ても結局負けてしまうとはどういうことなのでしょうか。
このような問題は今後も起こるのか、あるいは、このような問題に巻き込まれないためにはどうしたらよいのでしょうか。
この問題は、テレビの情報番組などでも取り上げられたのでご存知の方も多いと思います。
念のため、経緯をざっとおさらいしておきましょう。
問題の発端は2001年にさかのぼります。
日本発祥で、中国はじめ、欧州やアメリカにも進出している世界的な生活用品ブランドとして知られる「無印良品」の商標を、中国の現地企業が勝手に商品登録してしまったとして、「無印良品」ブランドを展開する良品計画が中国の裁判所に商標登録の取り消しを訴えたのが2001年のことです。
裁判は最高裁まで争われたものの、この当時、無印良品はまだ中国に進出していなかった時期だったこともあり、2012年、「日本側の関連商品は中国市場での知名度を確認できない」として、良品計画の上告を退ける決定を下し、同社側の敗訴が決定しました。
この間、無印良品は中国への本格的な進出を果たし、すでに人気のブランドに成長していたものの、やむなく、中国の現地企業が商標登録してしまった織物など一部の商品ついて、漢字表記の「無印良品」の商標を外して販売せざるをえなかったのです。
ところが2017年になって、中国国内でのタオルや寝具など織物について「無印良品」の商標を持つ「北京棉田紡織品有限公司」が、良品計画を商標侵害で訴えたのです。
中国国内での商標権を持つとはいえ、模倣しているのは明らかに中国企業側です。
ところが、北京知的財産権裁判所は同年末、原告の訴えを認め、良品計画側に損害賠償の支払いと謝罪文の掲載などを命じる判決を下しました。
中国国内で織物などの商品について「無印良品」の商標権を持っている北京棉田が展開する同名の店舗は、看板やサインなど店内装飾から値札のデザインまで無印良品そっくり。
その反面、品質についての評判は悪く、このままでは本家のブランド価値まで棄損されかねないとして、良品計画は徹底抗戦の構えですが、いまのところ先行きは不透明です。
デザインや意匠を模倣された挙句、勝手に商標登録され、さらに、裁判になっても結局勝てないとすればいったいどうすればいいのでしょう。
個人的な感想から言うと、外国において知的財産権について法的に争って正当な解決へ導くことは、まだまだ難しいことなのだと改めて実感した次第です。
皆さんは、海外へ行っても、日本同様、産業財産権は守られるものだろうと思っているかもしれません。
しかし、実際は、海外市場への参入が容易になった現在でも、トラブルは堪えることがありません。
中国だけでなく、ヨーロッパでもアメリカでも、日本人からするとちょっと理解しにくいようなことが度々起こります。
日本人、特に訴訟を経験したことのない方は、「法的に正しければ勝てる。正義は自分たちにあるのだから問題ない」と誤解している方が多いように思います。
が、現実は違う場合もあります。
日本国内でさえ、訴訟に勝つにためには非常に大きなお金がかかります。
訴訟とは、法的に正しいから勝つわけではなく、勝つべく準備をしている側が勝つのです。
日本国内ですらそうなのですから、外国で訴訟をするのは、かなりハードルの高いことだとわかると思います。
法律的に正しくても、それだけでは勝てません。
相手も負けない準備をしてきているので、その主張をいかにひっくり返し、法廷戦術をはねのけて、勝利までたどり着くか、そのための準備がどこまでできるか、また、どこまでお金をかけられるかが勝負です。
勝手に商標を使われた挙句、結局、裁判でも勝てないとしたら、外国で商標登録などをしても意味がないのかというと、そんなことはありません。
商標登録の優れているところは、登録することで、ある程度、争いを予防できる(戦わずして勝てる)ことだと思います。
商標登録しさえすれば絶対に守れるとは言えません。
が、他社の商標を勝手に使えば争いになることは、いまどきどこの国の人だって知っています。
今回は中国の企業が勝ちましたが、毎回そうなるわけでもないのです。
もし負ければ莫大な賠償を請求されるのを覚悟で、他人の商標を好んで使うような会社はさすがに少数派です。
訴訟になった時の費用が莫大だからこそ、保険のような考えで商標登録することは、費用対効果から考えても良策といえます。
もう一つ重要だと思うのは、「優先順位」をつけて、徐々に商標登録することです。
多くの中小企業の経営者は、「海外で商品が売れるようになってから、国際出願(マドプロ)でまとめて商標登録すればいい」くらいの感じで、ものすごく大雑把に考えています。
しかし、世界の複数の国や地域で一気に商品が売れるようになる、ということはまずありません。
大体の場合、少しずつ売れる国が増えていって、長い時間をかけてビジネスがグローバルに広がっていく感じだと思います。
その間、どんなに早くても数年、普通は、10年や20年はかかるはずです。
その間、「この商品は伸びそうだ」と目を付けた現地企業が、先駆けて商標登録してしまうかもしれないわけです。
そうして商標を先に登録されてしまったら、それぞれの地域で訴訟のために膨大な時間と費用がかかることになります。
したがって、「後でまとめて」ではなく、重要な国から順に少しずつ戦略的に商標登録していくことが、自社の商標を守る上で重要な考え方と言えます。
愛知県中部の西三河と呼ばれる地域で限定販売され、地元民に親しまれた「キリンラーメン」が2018年5月、発売50周年目にして名称変更を行い、新しい名前を公募することを発表しました。
飲料大手のキリンとの間で商標の使用について話し合いがもたれ、結果、製造元の小笠原製粉側が折れ、「キリン」の名がつく商標の使用を断念したようです。
でも、「キリンラーメン」は食品で、なおかつ、発売から50年もたって、地元ではよく知られた商品。
それなのに、なぜ小笠原製粉側が折れたのか。
その背景にあったのは、先使用権の落とし穴です。
まず、ことの経緯からお話ししましょう。
愛知県碧南市で製麺業を営む小笠原製粉が即席ラーメン「キリンラーメン」を発売したのは昭和40(1965)年のこと。
愛知県を縦に三分割した真ん中あたり、西三河地方だけの販売でしたが、愛嬌のあるキリンのパッケージデザインとともに、地元に親しまれたいわゆるソウルフードです。
販売競争が激しくなり平成10年にいったん生産を休止したものの、復活を望む地元の声もあり、平成15年に1回限りの限定で1万食を発売。
あくまで限定復活のつもりだったものの、あまりの好調な売れ行きに、会社は一部ラインの再開を決定。
地元の西三河地方に向けた限定生産を再開します。
さらに、平成22年には、生産ラインのフル稼働にこぎつけ、全国に出荷できるようになり、完全復活を遂げたのです。
ところが、そんな矢先、やはり「キリン」の商標を持つ飲料メーカー大手のキリングループが「キリン」を含むの商標の使用について異議を申し立て、両者の話し合いの結果、小笠原製粉側が「キリンラーメン」の商標の使用を断念したものです。
キリンは明治創業のわが国を代表する飲料メーカーです。
全国的な知名度も非常に高いことは言うまでもありません。
もちろん、キリンを含む商標は広い範囲で商標登録済みです。
この中には食品も含まれます。
とはいえ、キリンラーメンもすでに発売から50年以上も「キリン」の商標を使っています。
半世紀もたってなぜいまさら商標の使用が問題になったのでしょう。
そして、なぜキリンラーメンの商標使用を断念しなければならなかったのでしょう。
ちなみに、キリン側の使う商標のモチーフは想像上の動物である「麒麟」であり、キリンラーメンのモチーフは哺乳類のキリンですが、商標権においては、その言葉の持つ意味や背景は問題にされず、違う意味でも読み方が同じなら商標権が認められます。
いずれにせよ、麒麟にしても、キリンにしても、造語ではなく広く知られたモチーフです。
したがって、いくらキリンビールが古い会社でも「キリン」と名乗るものすべてに独占権があるわけではありません。
実際、「キリン」を含む商標は、他にも多数登録されています。
「キリンラーメン」は商標登録こそしていませんでしたが、50年も前から使っているので「先使用権」が認められる可能性もあります。
ではなぜ、小笠原製粉は「キリンラーメン」の使用を断念し、商標を変えることになったのでしょうか。
背景にあるのは先使用権の落とし穴です。
キリンラーメンの小笠原製粉が陥った商標の先使用権の落とし穴とはなんでしょうか。
その前に、商標の先使用権についておさらいを。
日本の商標法においては、商標を先に使っていたかどうかではなく、先に商標登録した人に商標権が認められます。
同時期に同じ商標をたまたま使っていた場合、誰かが先に商標登録してしまったら、その商標はもう使えなくなります。
これを「商標の先願主義」といいます。
とはいえ、例外があります。
その商標を使って商売した実績があり、すでにある程度の知名度を得ている場合、誰かが先に商標登録してしまってからでも、使い続けることができます。
これが商標の「先使用権」です。
他の誰かに商標登録される前に、すでに商標を使っていたというだけでなく、それなりの知名度を得ていることが条件です。
キリンラーメンの場合、発売から50年以上同じ名前を使い続け、かつ、地元では知らぬものはいない知名度を持っていますので、先使用権が認められそうです。
今回の場合は、当事者による話し合いで決着しましたが、もし裁判に発展していたら、この点が争点になったでしょう。
小笠原製粉は「キリンラーメン」を商標登録していなかったようなので、商標権がキリンにあるのはしょうがありません。
小笠原製粉にとっては先使用権が認められるかどうかが問題のはずです。
両者の間でどのような話し合いがもたれたか、双方とも言及していませんが、結果として小笠原製粉側が断念したということは、先使用権を主張するのに何らかの齟齬があったからだと考えられます。
そのカギになるのは、同社が平成10年に商品の生産・販売をいったん中止していたことです。
商標の先使用権が認められるかどうかは、ある程度の知名度をすでに獲得していることと、もう一つ、継続的に使用していることです。
昔はよく知られていた、では駄目なのです。
この点、いったん商品の生産・販売を中止したことで、商標の使用期間に空白が生まれました。
おそらく、この点が障害になったのではないかと思われます。
小笠原製粉は公募のなかから決めた「キリマルラーメン」を新名称と決めて再出発を図りました。
結果として、この件は話題になり、宣伝効果も生まれたとはいえ、最初から「キリンラーメン」で商標登録していれば、問題はなかったのです。
もしくは、その際に、キリン側と商標で争うことになれば、違う名前でスタートしていたでしょう。
いずれにしても、いまになって名称変更することにはならなかったはずなのです。
MIXIの子会社で、チケット転売サイト「チケットキャンプ」を運営するフンザが、商標法違反と不正競争防止法違反の疑いで当局の捜査を受けたことをもって、12月7日から一時サービス停止に踏み切りました。
捜査当局、会社側とも容疑内容を明らかにしていないため、何がどう商標法違反なのか詳細は不明です。
どうもあの事務所を怒らせてしまったのではないかともっぱらのうわさです。
ところで、チケット転売サイトで商標法違反とはどういうことなのでしょうか。
チケットキャンプは、個人どうしが自分で使う目的の公演チケットを売買するサイトとしては最大手。
仕組みは、コンサートや演劇などのチケットを購入したものの、都合で行けなくなったときなどにチケットキャンプに出品。もっとも高い応札額を提示した人が落札できるというもの。
チケットを出品する人にとっては、少しでもお金が戻ってくるメリットがあり、応札する側にとっても、定価より安くチケットが手に入ったり、すでに売り切れるなどして入手しそびれた公演に行けたりといったメリットがあります。
あくまで、個人間での売り買いという前提ですが、定価より高く売るケースや、転売目的で不正利用する利用者が現れるなどのいわゆるダフ行為が一部で行われ、問題視されていました。
運営側でも転売目的の不正利用について対策強化を打ち出したばかりでしたが、効果が上がっておらず、ついに堪忍袋の緒が切れたのが例の事務所と言われます。
あくまでも、うわさですが、例の事務所とはジャニーズ事務所のこととされています。
ジャニーズ事務所は、もともとチケット転売サイトの存在を苦々しく思っていたらしく、フンザに対してもたびたび抗議を入れていたようです。
それが聞き入れられなくて、ついに告発へと踏み切ったのではないか、というわけです。
事の真相究明は他のサイトにゆずるとして、ここで気になるのは、いったい何が商標法違反に問われたのか、ということです。
オークションサイトやフリマサイトなどでは、個人が手持ちの物品を出品するわけですが、その際、当然ながら「○○社製の○○売ります」というように、商標を記載することになります。
個人間のやり取りなので、こうした行為が商標法違反に問われることはありません。
では、チケットキャンプの何がいけなかったのでしょうか。
チケットキャンプ自体は、あくまで個人間の売買を仲介するだけであり、その範囲内であれば他人の商標を記載しても問題はないはずです。
それが、商標法違反に問われているということは、実際の商標権者が提供しているような態様、つまりサービス名として捉えられるような態様で他人の商標を使っていたということになります。
どういうことかというと、実は今回の捜査の前哨戦となるような出来事が11月に起きています。
このころチケットキャンプは、「ジャニーズ応援キャンペーン」という企画をサイト上で展開していました。
売買しているのは個人同士で、チケキャンはあくまで仲介をしているだけという建前ですが、売買を促進する一つの手段として、ジャニーズ関連の出品を集めて、期間中に売買手数料を無料にするキャンペーンを打ち出し、サイトで派手に告知していたのです。
すでに、この時の表示はジャニーズ事務所の抗議を受けて削除されてしまっていますが、サイトの上部、一般的にはサイト名などを掲載するようなスペースに、でかでかと「ジャニーズ」と表示していました。
これが、「実際の商標権者が提供しているような態様」と警察に認識させたのではないかと考えられます。
ジャニーズ事務所としては、本当はチケットの売買そのものをやめさせたかったはずですが、それができず、自社の商標である「ジャニーズ」の呼称を勝手に使った商標法違反を指摘。
フンザ側でもこのときは、「商標に対する認識不足」を認め、表示を削除したという経緯がありました。
ところで、「実際の商標権者が提供しているような態様」とはどのようなものでしょうか。
たとえば、あるお店が、非正規ルートで仕入れた商品を販売する際、販売するだけなら法律違反にはならないものの、人目を引こうと店頭に大きく商標名を掲げたらどうでしょうか。
これは、やり方と、程度の問題でもあります。
手書きのPOPをつけるぐらいならセーフかもしれませんが、仮に、自店の本来の看板の上に、その会社のロゴマークを勝手に拝借してバーンと貼り付けたら、これはもう商標法違反です。
今回の問題もこれと同じではないかと考えられます。
チケットを転売してはならない、というのはチケット発行者側が決めた取引ルールなので、当事者間で契約違反を争うことになったとしても法律違反しているわけではありません。
したがって、取引そのものを止めることはできず、その過程で商品説明のために商標を使っても問題はありません。
しかし、商品の説明を装いながら、実態的には、他人の登録商標を自社のビジネスを促進するための宣伝材料として利用したと捉えられれば、商標法違反に問われる可能性があるということです。
参考:
ジャニーズに抗議受けたチケットキャンプ 確認不足を認めるも「キャンペーン自体は継続の判断」
チケット売買サイト「チケットキャンプ」がサービスを一時停止 商標法違反・不正競争防止法違反の容疑
天皇陛下の退位の時期を平成31年4月30日とし、皇太子さまが次の天皇として翌5月1日に即位される案が皇室会議でまとまりました。
平成時代のカウントダウンが始まったわけですが、そこで気になるのが次の年号が何になるかです。
一般的には、「どんな称号になるんだろうな」ぐらいの関心だと思いますが、商標の世界では、結構、重要な問題です。
新元号になりそうなワードを予想して、先回りして商標登録しようとする人が必ず現れるだれろうし、発表されたら今度は、先を争って出願する人たちが殺到するでしょう。
さらに、改元と同時に、現在の「平成」を商標として取得しようとする競争も激化すると考えられるからです。
ところで、そもそも元号は商標登録できるものなのでしょうか。
大正製薬に昭和産業、平成国際大学・・・
言われてみれば、元号を使った商標は結構多い。
地名同様、世の中に広く知れ渡っているし、何となく重みというか趣のある響きなので、商標として使いやすいのでしょう。
地名同様、元号と業種などの組み合わせにすれば商標登録は可能です。
ただ、ここで問題にしたいのは、元号そのものを商標登録できるのか、です。
商標法では、公共的な団体、機関、及び、それに類する呼称による商標登録を禁じています。
さも公共機関に関連するようなまぎらわしい呼称を使うことによって、その権威にただ乗りするような行為を防ぐためです。
また、国や都市の呼称など、一般に共有されている名称も商標登録できません。一般に広く浸透している用語は、誰か特定の人に商標権を与えるのにそぐわないからです。
では、元号はどうでしょう。
元号は、時代を表す呼称であり、一般に広く共有されています。
すると、商標登録できないのか、というと、実は非常に微妙です。
元号は、日本の年代を表す国民共通の呼称であり、本来は、特定の誰かに独占使用を認めるべきものではないように思えます。
しかしながら、この問題を難しくしているのは、特許庁の審査基準には、「元号は商標登録できない」とは書いていないのです。
現行で継続中の元号は、公共性が高く、いずれにしても商標登録は認められないと考えられます。
が、すでに過ぎた時代のものに関しては「可能」と考える専門家もいます。
実際に、「明治」は明治ホールディングスが、「大正」は大正製薬がそれぞれ商標登録しています。
すると、平成時代が終わって元号が切り替わったら、「平成」を商標登録することができるのでしょうか。
平成が商標登録できるかどうかは、実際に誰かが出願し、特許庁の審査を経なければなんとも言えないのが正直なところです。
過去には、明治や大正が商標として認められたの事実ですが、これは、両社の圧倒的な社会的な立場、これまで行ってきた企業努力や膨大な広告宣伝などの背景を含めた上での判断でしょう。
しかし、過去に認めたからといって今後も同様の判断が下される、とは限りません。
商標登録の審査基準は、時代や社会の動きに合わせて柔軟に変化します。
出願する側が、裏技的なことをどんどん考えるのに対して、画一的な審査基準では対応しきれなくなってきているという側面もあります。
このため、審査基準に「ダメ」と書いていなければ=登録可能ということではないのです。
実際に、「平成」が出願されて、特許庁の審査を待たないと正確なことは言えませんが、認められる可能性は低いのではないかと個人的には考えています。
競合関係にあるメディア企業の商標を、ライバル社が無断で商標登録したのではないかと議論になっています。
商標を勝手に登録されたと訴えているのはVRをテーマとした情報サイト「MoguraVR」の運営などを行うMoguraという会社。
ライバル関係にあるスパイシーソフトという会社が「MoguraVR」をMogura社に無断で商標登録してしまったというのです。
このままではMogura社は、自社の商標である「MoguraVR」を使えなくなるばかりか、損害賠償を請求される可能性もあり、特許庁に対して商標登録の無効審判を請求したことを明らかにしました。
事実だとすれば、ライバル社に対する露骨な嫌がらせです。
いったいどうしてこのようなことになったのか、無効審判の行方は、Mogura社は自社の商標を取り戻せるのでしょうか。
MoguraVRは、代表で編集長の久保田瞬氏が立ち上げ、VR・AR情報に特化したニュースサイトとして、2015年2月にはリリースされていたと主張しています。
会社の設立はそれより遅く、2016年8月ですが、いずれにしてもVR関係のニュースメディアとしては比較的に先発のサイトと言われています。
ところが、サイト名、会社名とも、商標登録していなかったことが災いしました。
今年9月、無関係な第三者が「MoguraVR」を自分の商標として勝手に登録してしまったという情報が入ってくるまで、Mogura社側は事態を把握していませんでした。
あわてて事実を確認すると、確かに、2016年10月に「MoguraVR」が商標登録出願されており、2017年7月14日付で商標登録が完了しています。
さらに、商標を出願した会社の名前を見て、Mogura社側は驚愕します。
よく知っている会社でした。
その会社の名がスパイシーソフトです。
スパイシーソフト社は、本社所在地、電話番号、経営者氏名など、すべて非公開というちょっと変わった会社ですが、1999年設立で、アプリ交換サイトの運営や通信ゲームの開発もとなどとして業界では知られた存在。
問題は、スパイシーソフト社が行っている様々な事業の中で、「MoguraVR」と完全な競合関係にあるメディアサイト「VR Inside」の運営も行っているということです。
お互いが競合関係にあるメディアサイトですから、相手の存在を知らなかったとか、たまたま似てしまったとは考えにくい状況です。
状況から推測すると、ライバル社が商標登録していなかったことを知って、ちゃっかり商標登録してしまったと考えるのが妥当でしょう。
Mogura社側もそう考え、今年10月23日付で特許庁に無効審判請求書を申請し同30日に受理されたことを自社サイトで報告しています。
ちなみに、「受理」というのは、無効の訴えを認めたということではなく、無効審判請求を事案として審理することを決定したということであって、判断が下されるのはこれからです。
Mogura社側は、スパイシーソフト社による商標登録は、Mogura社の業務を妨害する目的であるとのこと、下記の通り断定しています。
不正の目的に基づいた剽窃的行為と評価されるべきものであり、社会の一般的道徳観念に反し、公正な商取引の秩序を乱すものであって、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある
これに対して、スパイシーソフト社側は、ねとらぼなどの取材に答える形で、次のように公式見解を寄せています。
VR Inside編集部です。
弊社は適正な出願を行い、特許庁から登録査定を受け、正式に商標登録をしております。
先方様は、長期間にわたり出願するタイミングがありましたが、何らかの理由で出願をされていらっしゃりませんでした。
また、商標掲載公報から2月以内に可能であった登録異議申立も行われていなかったようです。
そのような背景もあり、弊社の商標登録を不正とすることは、難しい主張と考えております。
以上を公式コメントとさせていただきます。
引用元:
「アプリ★ゲット」のスパイシーソフト、競合メディア「MoguraVR」の商標取得していた 露骨な“競合つぶし”ではとの声も
審判の結果がどうなるか、特許庁の判断を待つしかありませんが、一般論でいうと、Mogura社側の主張が認められる可能性は十分にあると考えられます。
まず、「弊社は適正な出願を行い、正式に商標登録をしている」ということですが、もし、MoguraVRの存在を知りながら、自社に商標権がないにもかかわらず、商標出願を行った場合、不正出願とされる可能性があります。
商標法では、他人の商標の先取りとなるような商標登録を認めていません。
他人に特許権や商標権のある知的財産権を、自分のものであるかのように出願することを「冒認出願」といい、法律で禁止されています。
商標出願時点では、その商標が他人に使用権のある商標なのか、調べる手立てがないので、書類に不備がなく、似たような商標が先に登録されていないなど、一定の要件を満たせば商標登録を認めるのが特許庁の立場です。
ということは、「正式な審査を経て登録されたのだから正当な出願である」と言い切ることはできず、後から事実が発覚すれば取り消しになるのです。
また、スパイシーソフト社側が主張している「商標掲載公報から2月以内に可能であった登録異議申立」というのは、商標登録異議申立制度のことです。
商標登録されると、その情報はすべて商標掲載公報によって一般に公開されますので、その日から2か月以内に限り誰でも(つまり、商標権者でなくても)登録に不服があれば異議申立できると商法で定められています。
とはいえ、この期間を過ぎてしまえば一切異議は認められないということではありません。
したがって、「弊社の商標登録を不正とすることは、難しい主張」と言える根拠はないことになります。
今回の件は、Mogura社側の主張の通りなら、スパイシーソフト社の商標登録の無効が認められる可能性は十分にあると考えられます。
しかし、絶対ではありません。
無効が認められない可能性も残されています。
そうなった場合、相手側の出方によって、Mogura社は商標が使えず、2年間続けてきたニュースサイトのタイトルを変更しなければならないかもしれません。
もし本当に、相手側に業務を妨害する意図があるなら、そのような主張を展開する可能性を否定できないでしょう。
仮に、商標登録の無効が認められなくても、商標出願以前からMogura社が商標を使っていたことが立証できれば、先使用権が認められることもあります。
先使用権とは、たまたま似た商標が先に登録されてしまったときの救済処置のようなものです。
自分自身も出願以前からその商標を使用し、一定の認知を得ていれば、商標権を主張することはできないけれど、使い続けることはできる、というものです。
しかし、それにしても商標の使用は大幅に制限されることになります。
自分が立ち上げ、大切に育て、やっと認知されるようになった商標を自分が満足に使えない。
そんな事態に陥りかねないのです。
このような事態にならないためにはどうしたらよいでしょうか。
一刻も早く商標登録するしかありません。
商標登録は早い者勝ちが原則です。
今回の件が、必ずしもそうだというわけではありませんが、ライバル社が嫌がらせや業務妨害を目的に勝手に商標登録してしまえる、という現実もあります。
相手の商標登録を取り消し商標権を奪い返す手立てがないわけではありませんが、無効審判請求など面倒な手続きを経なければならず、多大な労力と費用がかかります。
これに対して、商標登録にかかる労力と費用は、いかほどでしょうか。
出願作業を弁理士事務所に依頼すれば、出願人本人は特にやることはありません。
基本的には、待っているだけで良いのです。
費用についても、特許庁に支払う行政手数料と弁理士への報酬を合わせて、費用がかかったとしても30~40万円、安く上がれば15,6万円といったところです。
商標登録をしないで放置しておくことのリスクを思えば、お安い費用だと私は考えるのですが、いかがでしょうか。
参考:
【お知らせ】スパイシーソフト社保有の商標「Mogura VR」への無効審査請求の提出について
「アプリ★ゲット」のスパイシーソフト、競合メディア「MoguraVR」の商標取得していた 露骨な“競合つぶし”ではとの声も
国際的な地質年代表記に、日本の研究チームが提案した「チバニアン」が採用される見通しです。
すでに国際審査を順調にパスし、快挙へ向けて動き出していますが、思わぬところで問題が起こりました。
研究チームが国際学会に申請した名称「チバニアン」が、無関係の第三者により商標登録されていたのです。
このままではせっかく年代表記が実現しても、「チバニアン」の名称が国内で使えなくなってしまいます。
そこで、国立極地研究所などが特許庁に異議を申し立てていたのですが、その判断が先ごろ下されました。
まずは、「チバニアンとは何か」について。
地球の歴史はジュラ紀や白亜紀といったおおくくりの年代層だけでなく、さらに細かい年代層の表記があります。
それぞれの年代層を表す特徴的な地層が発見された場合、世界の学術界で基準となる国際標準として国際地質科学連合に申請し、認められると提出者に命名権が与えられます。
今回、日本の研究チームが申請したのは、約77万~12万6000年前の年代を表す地層で、千葉県で発見されたことから、「千葉時代」を意味する「チバニアン」と命名されました。
同じ年代層を同時期にイタリアのチームが申請し、日本と一騎打ちになっていましたが、一次審査で日本の「チバニアン」が選ばれ、大きくリードした形です。
地質年代層の表記については、歴史的に欧州勢が強く、アジアでは中国が申請したものが認められたのみ。日本はまだ未登録です。
実現すれば、地球史に初めて日本の地名が表記されることになります。
さて、今回の本題はここからです。
研究チームが「チバニアン」を国際機関に地質年代名として申請しようと動く中で、すでに千葉県内の事業者によって「チバニアン」が商標登録されていることがわかったのです。
この問題については、すでに下の記事で取り上げていますので、詳しくは関連記事をごらんください。
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商標登録はビジネスで使用する商標を保護する制度なので、学術的な名称を登録することはできませんが、今回の場合は、学術名として使われる前に、まったく同じ商標がたまたま商標登録されてしまっていたということです。
特許情報から推測すると、チバニアンを商標登録した事業者は、千葉県のおみやげ物の商標として使う目的のようです。
指定区分が異なれば、使用には問題ありません。したがって、学術名として使用する分には、特に問題なさそうです。
ところが、日本の研究チームが懸念したのが、先に商標登録されていた「チバニアン」の指定商品に「印刷物」が含まれることです。
学術名として採用されれば、論文や書籍に表記されることになるだろうし、学術目的のイベントのチラシやパンフレットも印刷することがあるでしょう。
そうした活動に支障がでるかもしれません。
そこで、商標登録されている「チバニアン」の指定商品の中から「印刷物」を除外するよう、特許庁に対して異議申し立ていたところ、11月1日付で異議が認められたものです。
商標登録異議申立制度は、すでに商標登録されている商標に対して、誰でも登録の取消しや指定区分・役務、指定商品・役務の変更を求めることができます。
商標登録の異議が認められるケースとしては、商標が業界内で定着して一般名称化している場合や、他社の商標を無関係な第三者が先んじて登録してしまうなど公序良俗に反する場合などに限られます。
今回について、「チバニアン」を先に商標登録していた事業者に悪意や不正の根拠は見られず、たまたま同じ名称になってしまっただけのようです。
それでも、今回は、学術目的という公共性の高さを優先する判断が下されたようです。
参考:
印刷物の商標登録を取り消し 特許庁、研究チームの異議認める
地球史に「千葉時代」誕生へ 日本初の地質年代名、国際審査でイタリア破る
やめられない、とまらない
でおなじみのかっぱえびせん。
時代の移り変わりの中、昭和のスナック菓子が徐々に姿を消しつつありますが、かっぱえびせんは現在でも第一線で活躍中。
ところで、耳について離れないあの歌詞とメロディ、制作者がさる大物だったとご存知でしょうか。
今回は、カルビーかっぱえびせんのCMソングについて調べてみました。
カルビー公式サイトによると、かっぱえびせんのCMソング(サウンドロゴ)は、作詞伊藤アキラ氏、作曲筒井広志氏となっています。
伊藤さんに、筒井さん?
大物というわりには「聞いたことがないな~」、と思った人も少なくないと思います。
お2人とも、シンガーソングライターのように、自ら表に出るタイプではなく、オーダーに応じて、詩や曲を提供する裏方として活躍した方なので、知名度そのものは高くありません。
けれど、それぞれの手掛けた作品を知ると、誰でもが知っているあのフレーズ、あの曲ばかりという超大物なのです。
まず、作詞家の伊藤アキラ氏から。
歌謡曲やアニメソング、テレビ番組の主題歌・挿入歌を数多く手がけたことで知られ、とくに、フジテレビの「開け!ポンキッキ」シリーズでは初代オープニング曲からかかわり、現在まで多くの詞を提供。
これまで手掛けた作品は1000以上と言われています。
そんな伊藤さんがもっとも活躍したのがCMソングの世界で、「この~きなんのき、きになるき」という出だしが印象的な「日立の樹」(日立製作所)、これまた昔懐かしい「出前一丁」(日清食品)、「エバラ焼肉のたれ」(エバラ食品工業)など、いずれも、聞けばそのフレーズを思い出す作品ばかり手掛けています。
曲を手掛けた筒井広志氏も多方面で活躍。
作曲家としては、舞台や映画の劇中歌、テーマソングを数多く担当しつつ、自らも原作、舞台脚本の執筆を手掛ける文筆家としての面もありました。
CMソングについては、代表曲「カルビーのかっぱえびせん」のほか、やはり、有名作曲家である小林亜星氏が手掛けた曲の編曲者として、多くの作品に携わったのです。
この、「やめられないとまらない」というフレーズは、文字商標として商標登録されているだけでなく、現在では、CMソングの「やめられないとまらないカルビーかっぱえびせん」が音商標としても商標登録されています。
以上、カルビーのかっぱえびせんで使われるCMソングのあれこれについて調べてきました。
参考:
カルビー公式サイト
1990年代ごろまで長く放送されていた、清酒「松竹梅」のCM。
現在も宝ホールディングスのCMに出演している渡哲也さんの印象が強いのですが、実は、あんな人やこんな人まで主演していたり、CMソングもロングバージョンからショートバージョンまでいろいろあったり、意外に忘れていたことも多いことに気づきました。
そこで今回は、松竹梅のCMあれこれについて調べてみました。
松竹梅のCMについては、長く渡哲也さんが勤めていますので、印象が強いのですが、実は、渡さんの前に、初代CMキャラクターを勤めた人がいます。
松竹梅の初代キャラクターといえば、昭和の大スター、故・石原裕次郎さん。
現在は渡さんが社長を勤める石原プロモーションの初代社長でもあります。
1970年から、亡くなる年の1987年まで松竹梅の顔であり続けました。
石原裕次郎さん出演のCM
石原さんが亡くなった後、一番弟子だった渡さんがその意思を継いだわけですが、松竹梅のCMもそうして引き継いだものの一つ。
1988年から渡地さんがCM出演を継ぐと、出演だけでなくサウンドロゴも担当。これは、石原さんも同じで、自身が歌うCMソングをバックに本人が出演する演出が定番化していたわけです。
そのほかの出演者は、昔懐かしいところでは、宇野重吉さん。石原さんがCMキャラクターを手掛けていたときの共演者として出演しています。
最近のバージョンでは、アイドル時代にAKB48のセンターとして活躍した女優の前田敦子さんと渡さんが共演したものもあります。
現在は、「松竹梅」から、「松竹梅・天」に主力商品が変わりましたが、CMには引き続き渡さんが出演しており、往年の名女優吉永小百合との共演バージョンが放送されています。
渡さんと吉永さんが共演する現在の「松竹梅・天」のCM
現在のCMソングは、渡哲也さんが歌う「しょうちくばい、てん(松竹梅・天)」という商品名だけのものですが、実は、もともとはもう少し長いメロディと歌詞がありました。
フルバージョンは以下の歌詞です。
のむこと
すなわち
よろこびさ
よろこびのさけ
しょうちくばい
歌詞つきメロディを使ったCMは、1990年代ごろまで放映されていました。
その後、後半のフレーズ、
よろこびのさけ
しょうちくばい
だけになり、最終的に商品名だけになりました。
現在では、フルバージョン、ショートバージョン、旧商品名、現商品名の4種類のサウンドロゴが音商標として商標登録されています。
参考:
宝酒造公式チャンネル
は・じ・め・て・のアコム♪
のフレーズでおなじみの、個人向けローンのCM。
現在は、女優の永作博美さんをメーンキャストに、ラグビー部員軍団とのコミカルなCMが話題です。
過去には、当時まだ無名だった女優の小野真弓さんが注目されるきっかけとなるなど、旬の若手女優・タレントを多く起用してきたかと思うと、2009年には、一転してお笑い界の重鎮タモリさんを起用するなど、常に話題を振りまいてきました。
そんな歴代CMの中で、変わらず使われているおなじみのフレーズ「はじめてのアコム」。
軽快なリズムが耳について離れないCMソングでもありますが、実は、原曲があったのをご存知でしょうか。
「はじめてのアコム♪」というフレーズが使われるようになったのは2000年からで、このとき、CMで使われているメロディも完成していました。
日本にまだなじみがなかった個人向けローンを広めるため、「はじめての利用を歓迎する」という願いを込めたキャッチコピーから生まれた曲でした。
曲そのものは2005年でいったんCMから姿を消しましたが、キャッチフーズは現在まで連綿と使い続けられています。
現在のアコムCM
そのCMソングを手掛けたのがシンガーソングライターの鈴木崇さん。
原曲は、「はじめての鈴木くん」といい、男の子の初恋をテーマにした曲だそう。当初は鈴儀さん自身もCMに出演していました。
CM放送開始の翌年には、オリジナル曲としてDVD化もされていたのです。
鈴木さんは、アーティストとして活動しながら、広告代理店の社員という二つの顔を持つ変わり種。
CMソングの制作を手掛けたころには、プロのシンガーソングライターとして活躍していたものの、2003年にいったん制作活動を休止。
大学院修士課程に進みメディア学を学んで、卒業とともに広告代理店に入社しました。
現在は一社員として広告制作やプロモーション企画に携わりながら、CMソング、キャンペーンソングの制作も手掛ける“シンガーソングサラリーマン”を自称しています。
参考:
鈴木崇公式サイト